どうも、なおです。
みなさんは論文を読んだことはありますか?
私は大学時代の研究の際に先行研究を毎日読み漁ったり、いまでも本の参考文献などから興味のあるものを読んでいます。
論文と聞きますと、
「学者が読む難しい文章なんでしょ~?」
と、思うかもしれません。
しかし、論文はある程度文章の構成が決まっていて、最悪ここさえ読めば全体像がつかめるみたいなポイントがあるのでそこまで難しくありません。
近年では、
- 個人の意見や感想だけなく根拠やデータも重要視されている
- IT化によりデータや統計の知識が求められるようになった
- いろんな情報が発信される中で信頼できる情報源がわからない
このような背景から論文を読むための知識や実際に論文を読む必要性が増えてきたように思います。
そこで今回は「心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門」という本を参考にしつつ、研究の基本的な種類についてまとめていきます。
それではさっそく見ていきましょう。
心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門 エビデンスを「まなぶ」「つくる」「つかう」
著 原田隆之
金剛出版
本の紹介
今回紹介する本は、タイトルにあるように研究や論文について、おもにつぎのようなことについて解説しております。
- 重要性
- 研究の種類
- 読み方
- 利用や応用の仕方
実際に出てくる事例は心理職向けの内容だったりするのですが、エビデンスの重要性や見つけ方、そして使い方はどの分野でも応用することができます。
そこで今回は第一弾としてエビデンスがつまっている情報源である論文の種類や基本的な知識を紹介していきます。
本書ではそれ以外にも、
- インターネットでの検索の仕方
- 実験結果の基本的な見方
- 心理療法におけるエビデンスについてなど
さまざまなことについて書かれているのでこれから紹介する超基本的なことだけでは物足りない、もっと知りたいという人はぜひ本書を読んでみてくださいね。
エビデンスの種類を知ろう!
まずは実験の種類についてみていきましょう。
ひとくちに実験や研究と言ってもたくさんの種類があります。
そこでエビデンスとして信頼できる順位として本書ではつぎのようにまとめられています。
- RCTのメタ分析
- RCT
- 準実験
- 観察研究
- 事例を集めた研究
- 専門家の意見
さっそく難しそうな言葉がいくつか出てきたので一番信頼度の低い専門家の意見からひとつずつみていきましょう。
専門家の意見
一番信用できないのは専門家の意見です。
もちろんちゃんとした研究をもとにした発言は信頼することができますが、その人の直感や経験にもとづく意見は根拠にはなりません。
「これってあなたの感想ですよね?」
この有名なセリフであしらっておきましょう。
事例を集めた研究
事例を集めた研究というのは、
「あの企業ではこんな福利厚生があって満足度が高いらしいのであの福利厚生は効果的みたいですよ~」
というイメージです。
これも偏りが大きく証拠としては弱いです。
先ほどの例でいきますと、
- その企業の業界
- 雇用形態や社員の年齢層
- 文化や風土
このようなさまざま要因が複雑に絡み合って成功している可能性があります。
なのでその企業だからこそその福利厚生が成功したかもしれないのです。
このように少ない事例では一般化することが難しいので証拠としてどうしても弱くなります。
観察研究
観察研究はたとえば健康な人とそうでない人を過去の要因から比較したり、逆にこういう要素をもっている人は将来どうなるのかということを比較する研究になります。
たばこでたとえますと、
- 肺がんの人と健康でない人の過去の喫煙歴を調べる
- 喫煙者と非喫煙者の将来の健康リスクを観察する
これで肺がんの人のほうがたばこを吸っている人が多いからたばこは危険ですよねとなったり、喫煙者のほうがそうでない人よりも病気になる確率が高いよねということが導き出せます。
しかし、あくまでもこれは観察ですので、こちらが比較できるものはたばこを吸っているか否かだけ。
なので「実はほかのことが原因でした!」なんてこともあり得るので完ぺきではないのも観察研究の特徴です。
準実験
準実験は実験の参加者に何らかの介入をおこなってその効果の変化を調べる実験です。
これを臨床研究と呼んだりします。
実際にこの薬を飲んでみてどれだけ効果があるのかを調べるみたいなイメージです。
しかし、これで効果を出ても必ずしもその薬の効果が証明できるわけではありません。
- 実は実験参加者がこっそりほかにも薬を飲んでいた
- 薬を飲まなくても時間の経過によりある程度症状が改善された
- プラシーボ効果(思い込み)により症状が改善した
主にこのような要因が原因で効果が出てしまうことがあります。
そのなかでもプラシーボ効果はかなり強力で薬だと知らせてただの水を飲ませるだけでも15%ほどは効果が出るのではないかと言われているくらいです。
なので、薬はこのプラシーボ効果を上回る効果を発揮しないと残念ながら認められません。
そこで薬を飲ませたグループとそうでないグループの2つに分けたRCTがより信頼できる研究になります。
RCT
RCTはランダム化比較試験と言い、何らかの介入をおこなったグループと介入したふりをしたグループに分けて実験したものです。
これだと先ほどあげたプラシーボ効果なども比較できるのでより正確に効果を計測することができます。
基本的にこのRCTこそが信頼できるエビデンスになります。
しかし、RCTと言えどもたったひとつの研究結果だけを鵜呑みにすると危険です。
そこで最も強いのがたくさんのRCTをまとめ、統合したものがメタ分析になります。
RCTのメタ分析
メタ分析とはその特定の実験に対するたくさんの研究を分析し、統合したものになります。
そしてその研究の対象がRCTなのでかなり信頼性は高くなります。
なので、RCTのメタ分析を見かけたらラッキーです。
まさに論文のなかの精鋭部隊みたいなものですね。
ひとつの事例以上のことを考えよう!
ここまで論文の種類についてみてきましたが、私たちが普段仕事でアイデアを出したり説得をするときにいかに弱い根拠を出しているのか痛感しますね。
自分の意見を主張したり、インターネットでほかの企業の事例を調べたりがやっとな人がほとんどだと思います。
さすがに実験するのはハードルが高いですが、
- エビデンスのレベルが高い本の内容を引用する
- 関連する論文を検索してくる
このようなことをおこなうと上司から理詰めされたり、ふわふわしたまま議論が終わることが少なくなると思います。
なので、会議のまえにはエビデンスを集めてくるようにしておきたいですね。
そこで次回では実際の論文の構成や読み方、そして検索方法について解説するので気になる方はそちらの記事も参考にしてください。
まとめ 質の高い論文を見極めよう!
いかがだったでしょうか。
今回は論文の基本的な種類で終わってしまいましたが、次回は実際の論文の読み方や検索方法について解説していこうと思います。
エビデンスを用意するだけで相手の反応も変わると思いますのでぜひワンステップ前に進みたい方は論文にも挑戦してみてくださいね。
ということで今回は以上になります。
それでは、また!
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続きの論文の読み方と検索方法についてはこちらで紹介しています。